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新型コロナウイルス感染症の現在
2019年12月に中国・湖北省武漢市で発生した原因不明の「肺炎」は、「新型コロナウイルス」(COVID-19)という感染症名を与えられて世界中に波及していきました。
そしてコロナ禍になって3年目の2022年12月現在、国内では第8派の危機が叫ばれています。
とはいえ流行の長期化により、これまで日本国内で累積された陽性者は延べ26,309,153 人となり、国民の約5人に1人が感染する状況にまで発展し、社会はこの現象と共生する方向で舵を切るようになってきました。
因みにコロナによる死者の累積は52,043人となっています。(※陽性者、死者数は2022年12月13日現在の数字)
最近では厚労省が国民の抗体保有率を発表し、全国で抗体を保有している人の割合が26.5%に達していることが分かりました。
しかしこれには都道府県の地域差があり、最も保有率の高い地域は沖縄県の46.6%、最も低い地域は長野県の9%だったことが分かりました。
年齢別に見ると16~19歳が38.0%と最も高く、年齢が上がるにつれて保有率は下がり、60代は16.5%となっています。(2022年12月5日報道)
国内でコロナウイルスが広まった当初は、呼吸器系の症状が悪化することで重症化や死に至る確率が高く、私たちがよく知っていた芸能人も亡くなるなどして、この伝染病の脅威が広まり、社会的パニックを引き起こしましたが、デルタ株からオミクロン株への移行とともに「弱毒化」したともいわれ、徐々に人工呼吸を要するような重症者数は減少してきています。
また、国内の製薬会社が治療薬を開発し、その使用を厚労省が認可しました。
これは重症化するリスクが高い患者を対象にしていたこれまでの薬と違い、軽症の段階から服用できる飲み薬で、重症化リスクの低い患者でも服用できます。
インフルエンザの際に処方される薬と同じ要領で、発症後すみやかに服用すれば、発熱などの症状を改善することができるので、コロナ感染への社会的抵抗意識が弱まっていくことも期待できます。
感染症の歴史
新型コロナウイルスはこのまま弱毒化し、インフルエンザウイルスと同じような身近な病気として私たちに許容され、これまでの社会や日常を取り戻していくことができるのでしょうか。
考えてみれば過去20年の間にも、世界は感染症パニックを度々経験していました。
現在、感染症法の<二類>に分類されている重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2002年中国・広東省から発生し流行しました。
また同様に二類に分類される中東呼吸器症候群(MERS)は、アラビア半島で発生し2012年に流行しています。
さらに、2009年には新型インフルエンザが世界的に流行し、日本にもその影響は襲来しました。
現在のコロナパンデミックと同じように、当時も社会的イベントの中止が相次いで検討・実施されるなど混乱を引き起こしたことは記憶に新しいと思います。
また、今から100年あまり前も「スペイン風邪」と呼ばれたインフルエンザウイルスが猛威をふるい(流行期:1918年~1920年)、世界の国々を混乱に陥れていました。
日本でもスペイン風邪による犠牲者は多く発生しており、志賀直哉の短編小説『流行感冒』(1919年)には主人公の妻や女中が感染した状況、流行感冒に対する市井の人々の意識が描かれています。
この他、当時の文学や雑誌を覗くと、マスク生活で感染予防し、ひとたび感染すれば床を敷き療養して、非感染者との接触を避けることでその流行をやり過ごしていた人びとの様子が描かれていることが分かります。
近代医学が格段に進歩した現在におけるコロナ対応とほとんど変わらない感染症対策が100年前の日本でも行われていたのです。
コロナ禍の次なる課題
コロナ後遺症/
罹患後症状(PACS)
人間社会は常に未知のウイルスと遭遇し、そのウイルスと死闘を繰り広げながら抗体を獲得し、ウイルスと共生していく道を歩んできました。
2019年末から始まったコロナ禍ももはや3年目に入り、その間に多くの人々が罹患し、抗体を獲得して集団免疫が形成されています。
そして近代医学の力でワクチンや治療薬が開発され、コロナの脅威を人間社会から排除できるまでになってきました。
過去のSARSやMERS、新型インフルエンザと同じようにその脅威が弱まり、私たちが許容できる病気として落ち着いていく日もそう遠くはないことでしょう。
しかし次なる問題が見えてきました。
感染症に罹患した際の症状は軽症化しているものの、感染症は消失したはずなのに、倦怠感やブレインフォグといわれる思考力の低下が続く人びとが、コロナ禍の長期化とともに顕在化しているのです。
これは「罹患後症状」(PACS)と呼ばれる事態で、WHOは次のように説明しています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の症状は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、
少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明のつかないものである。
通常はCOVID-19の発症から3カ月経った時点にもみられる。
症状には、疲労感・倦怠感・息切れ、思考力や記憶への影響などがあり、日常生活に影響することもある。
COVID-19から回復した後に新たに出現する症状と、急性期から持続する症状がある。
また、症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもある。
小児には別の定義が当てはまると考えられる。
(厚労省「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版」から引用)
海外の報告によると、感染後2カ月、あるいは退院後1カ月を経過した患者のうち、72.5%の者が何らかの症状を有することが分かってきました。
また、別の報告では、感染後あるいは退院後6カ月以上経過した者のうち、何らかの症状を有する者が54%いるということです。
罹患後症状を発症するタイミングについては、全体の91%が感染発症後から10日以内と言われています。
しかし稀に感染症の症状が落ち着いた後、1~2カ月経って後遺症の症状が出たという方もいるようです。
そして最も問題なのが、現状において後遺症の寛解は難しいと医療現場で考えられていることです。
後遺症を発症した人のうち、一年以内に寛解する人は全体のわずか15%とされ、残りは一年が経過しても症状が続き「完治」が難しい病気と考えられているようです。
しかし、コロナウイルスの流行からまだ数年しか経過していないため、その全体像は分かっていません。
不明な部分が多いコロナ後遺症ですが、症状にお困りの方にとって日々の生活が辛く、不便になっているかもしれません。
前向きに、鍼灸という選択肢をぜひご検討いただければと思います。
●コロナ後遺症に対する鍼灸治療の実際 をご参照ください。