首肩こりは、単に首や肩の筋肉が凝り固まっているだけでなく、肩甲骨周り、背中の張り感、頭痛、吐き気、食欲不振など、カラダ全体の緊張に及び、日常生活が辛くなってしまうことがあります。
首肩こりの改善にむけて、原因や症状など、首肩こりについて正しく理解することからはじめましょう。

厚生労働省が行った2019年の「国民生活基礎調査」結果によると、女性が抱える体の症状の中で、“肩こり”が最も多い第1位にあげられています。
ちなみに、男性では第2位となっており、“肩こり”は、日本人にとって国民病と言える症状となっています。

【出典】
厚生労働省「国民生活基礎調査の概況 世帯員の健康状況」2019年

女性が訴える症状(肩こりが第1位)

参考まで
【国民生活基礎調査の結果】(コロナのため2019年以降調査は行われていません)

  • 病気やけが等で自覚症状のある者〔有訴者〕は人口千人当たり302.5(この割合を「有訴者率」という。)
  • 男女別有訴者率(人口千対)は、男性270.8、女性332.1であり、男性<女性である。
  • 年齢階級別にみると、「10~19 歳」の157.1 が最も低く、年齢階級が高くなるにしたがって上昇し、「80 歳以上」では511.0 となっている。
  • 男性の有訴者率が高い症状・・・第1位:腰痛、第2位:肩こり、第3位:鼻がつまる・鼻汁が出る
  • 女性の有訴者率が高い症状・・・第1位:肩こり、第2位:腰痛、第3位:手足の関節が痛む

首肩こりとは?
首肩こりの症状

“首肩こり”というと、どのような症状を思い浮かべるでしょうか?

  • 肩がカチンコチンに張っている
  • 首がガチガチに凝り固まっている
  • 背中が張り過ぎで、気持ち悪い など

感じ方はさまざまですが、とにかく放置していると辛くなる症状です。

首肩こり

そもそも、“首肩こり”とは、どういう状態を言うのでしょうか?
骨折や打撲などのように、何かをきっかけに急激に起きた痛みや、緊急性のあるような痛みとは違い、“首肩こり”の場合、鋭い痛みというよりは、張り感、鈍い痛み、圧迫感、違和感、不快感、重い、だるいなどといった感覚が主症状であり、時に首が正常に動かしにくくなります。
首だけの症状、肩だけの症状、首も肩も両方の症状、さらに、肩甲間部や背中にまでや、手の方にも症状が及ぶこともあります。

この“首肩こり”は、主に筋肉の疲労が原因で起こる症状です。

“首肩こり”という名称は俗称で、首・肩・腕に症状がおきることから、“頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)”とい名称が正式名称になります。

首肩こりの原因

首肩こりの原因は、次の3つに分類することができます。

  1. 首や肩の筋肉の筋疲労によるもの
  2. 首や肩の疾患の二次的に起こるもの
  3. 内臓疾患などに伴って起こるもの

首や肩の筋肉の
筋疲労による首肩こり

首肩こりに関係する筋肉は、主に僧帽筋という筋肉です。
この筋肉は、首、肩、背中にわたる大きな筋肉なので、首肩こりの症状が首、肩、背中に及びます。
そして、僧帽筋が凝り固まると筋肉がある首、肩、背中だけの症状で終わることなく、その先に続く部位に症状が進行していきます。

  • 首の症状が進行すると、頭痛や頭重感などをひき起こします。
  • 肩の症状が進行すると、手が重い、手の張り感、手の知覚鈍麻などの手の症状をひき起こします。
  • 背中の症状が進行すると、胸部の締め付け感、胃腸症状などをひき起こします。
首肩こりに関係する筋肉

重い頭を支える首肩

人間の頭は、約5kgの重さがあると言われています。
5kgと言えば、500mlのペットボトル10本分です。
この重い頭を支えるために、首や肩の筋肉が頑張ってくれているのです。

頭を支えるだけでも筋肉にはかなりの負荷がかかっていますが、それ以上に負荷をかけることが、首の前傾姿勢です。
日常的にパソコンやスマホを使ったり、本や雑誌などを読むために、首を少し前斜する姿勢が肩こりの原因となっているのです。

頭は重い

首の前傾姿勢が首肩こりの原因

首の前斜姿勢は、まっすぐ立っている時と比較をすると、例えば首が15度前斜すると、約2.4倍の負荷がかかり、首が45度前斜すると、約4.4倍の負荷がかかり、筋疲労を起こします。

この前傾姿勢を長時間にわたって続けたり、目を酷使していると、ストレスによる自律神経の不調、運動不足による易筋疲労や血行不良、首肩の冷えなどが加わり、単なる筋疲労だけでなく、首肩こりへと進行しています。

 

スマートフォンによる頭頚部への負担

スマートフォン症候群

スマホによる症状は、“スマートフォン症候群” という名前が付くほど問題視されており、社会問題になっています。
また、この“スマートフォン症候群”の中で、特に“首肩こり”を【スマホ首】と呼んでおり、現代病の1つとなっています。

こうした社会環境の中で、女性は男性に比べて、

  • 首が細く長い、なで肩、筋肉が脆弱といった体型的な要因
  • 首が大きく開いた服装が多いといった外部環境面での要因
  • 月経周期に伴うホルモンバランスの変動 など

さまざまな要因が複雑にからみ、首肩こりで悩まされることが多くなっています。

スマートフォン症候群の新聞報道

首や肩の疾患の
二次的に起こるもの

単なる筋疲労によって起こる“首肩こり”の他に、首や肩の疾患に伴って二次的に起こるケースがあります。
首や肩の疾患は、年代による違いがあります。

若者の首肩こりの
原因疾患

  • むち打ち(頸椎捻挫)など、スポーツ障害や外傷などが原因で起こるもの。
  • 胸郭出口症候群など、骨格や体の作りなどに起因して起こるもの。

中高年の首肩こりの
原因疾患

  • 頚椎症など、加齢による骨や関節の変性によって起こるもの。
  • 運動不足、筋力低下などによって起こるもの。

内臓疾患などに伴って
起こる首肩こり

内臓疾患などに伴う“首肩こり”は、イメージしにくいかもしれませんが、実際には“首肩こり”の症状ではなく、内臓の痛みを“首肩こり”と間違えて脳が認識している現象です。
内臓の痛みを脳に伝える脊髄は、たくさんの神経が複雑に混じって通っている場所なので、内臓の痛みを脳に伝える際、間違えて“首肩の痛み(こり)”として伝えてしまうために起こると考えられています。

代表的なものに、以下の疾患や症状をあげることがあります。

  • 気胸、肺癌、肺気腫などの肺疾患・・・疾患がある側の首肩こりとしてあらわれる
  • 消化器癌などのウィルヒョウ転移(左鎖骨上窩のリンパ節転移)・・・左側の首肩こりとしてあらわれる
  • 心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患・・・左側の首肩こりとしてあらわれる
  • 慢性肝炎などの肝臓疾患・・・右側の首肩こりとしてあらわれる
脳

その他、風邪のひきはじめの寒気を感じるような時に、首の後ろが張ったような“首肩こり”に似た症状が出ることもあります。
次のような症状がある“首肩こり”の場合は、注意が必要です。

  • 首や肩の筋肉が筋疲労起こすような原因がない
  • 首肩こりの症状が、日に日に悪化する
  • 寝ている時も首肩こりの症状を感じる
  • 首や肩を動かしても痛くない

安易に“首肩こり”だと自己判断せずに、病院で検査を受けることが必要だと思います。

コロナ禍でリモートワークや自粛生活をしていたため、首肩こりは今まで以上に身近な症状となったのではないでしょうか。
首の前傾姿勢や猫背でいる時間が長いなど、首肩こりの原因がはっきりしている場合には、まずは前傾姿勢を正すように生活様式や生活環境を見直すことが大切です。

そして、放置していると、頭痛、手のシビレなど、首肩こりから起こる二次的な症状が起こり、症状が複雑化していくので、その日の疲れはその日のうちに解消できるよう、ツボ押しなどもおすすめです。
●首肩こりに効くツボ

慢性化している場合には、鍼灸はいかがでしょうか。
症状が気になり始めた時が、鍼灸の受け時、おすすめです。
●首肩こりに対する鍼灸治療