いつ妊娠するのだろうか、妊娠する確率(妊娠率)はどのくらい?
ということは、妊娠を望む方にとって、とても重要なことだと思います。

特に、結婚の時期が遅かったり、経済的な問題や仕事の環境など、女性を取り巻く多様な環境の中で、気づいた時には30代半ばにさしかかり、いよいよ積極的に妊活を行わなくてはならなくなった時、果たして「このままで妊娠できるのか?」「いつ頃妊娠するものなのか?」ということが、とても気になることだと思います。

回り道をせず、1日も早く妊娠へと進んでいただけるように、妊活の進め方や、気になる「妊娠率」について、解説していきたいと思います。

積極的に妊活を行おうと思いたったら、まずは病院で婦人科の検査を受けることが不可欠だと思います。
「え~!?”」と思われるかもしれませんが、女性が30歳を過ぎる頃から、知らぬ間に婦人科疾患等になっている可能性があり、それが原因で妊娠しにくい体になっているかもしれないからです。
1年に1度の健康診断や、人間ドックを受けるように、婦人科領域の健康チェックも不可欠です。

自覚症状が全くなくても、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜症、チョコレート嚢腫など、一般的によく耳にするような疾患だけでなく、多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺の疾患、感染症など、妊娠を妨げるマイナス因子を持っている可能性があります。
無駄な時間を過ごすことがないように、まずは今の体の状態を正しく知ることからスタートすることが望ましいのではないでしょうか。

特に30代半ば頃からの1年という時間は、とても貴重な時間です。
だれしもが「私に限って…」という思いで病院受診を躊躇し、あくまでも自然妊娠にこだわって、1年、2年と様子をみているうちに、貴重な時間が無駄に過ぎてしまうことがあります。

もし、検査の結果、疾患や症状など妊娠に対するマイナス因子が見つかってしまった場合はもちろんのこと、仮に検査結果にマイナス因子が見つからなかったとしても、年齢が35歳を過ぎている場合には、残念ながら年齢自体がマイナス因子であるため、積極的に病院での妊活をスタートすることをおすすめします。
「え“~!!」と思われるかもしれませんが、マイナス因子を持った女性が妊娠することは、意外と難しいのです。

不妊治療は病院選びから

病院で妊活をスタートしようかな、と思った時、一番初めに迷うことは、「病院選び」ではないでしょうか。
30
代前半までの方であれば、まずは検査だけだから… と軽く考えることもできますが、35歳を過ぎた方の場合、検査の先には不妊治療が多かれ少なかれ必要となるので、病院選びはとても大切です。

いわゆる「高度生殖医療」の助けが必要になる可能性を考えれば、〇〇大学病院、△△総合病院という大きな病院を選びたくなるかもしれません。
もちろん、体の状態、地域の問題などによって、必然的に大きな病院を選ばざるを得ない場合もあるかもしれませんが、不妊治療は1回や2回の通院で終わることはなく、ある程度継続した通院が必要となるため、病院はご自宅やお勤め先から無理なく通える距離にあることが好ましいと思います。

「妊娠率」という言葉

何事も「まずはネットで情報集めから…」という時代ですから、病院選びも、病院のホームページに記載されている文字情報とイメージ画像を元に、病院選びをしている方がたくさんいらっしゃるかもしれません。
そして、ホームページに記載されている情報の中で、一番目につく情報は、「妊娠率」という単語や数字ではないでしょうか。 

でも、この「妊娠率」とは、どのような数字なのか、ご存知でしょうか。

「妊娠率」=「妊娠する割合」ですから、数字が大きい方が良いに決まっています。
しかし、一言で「妊娠率」と言っても、実はさまざまな種類の「妊娠率」の数値があるのです。

  • 対象となる人は、どのような集団なのでしょうか。
  • 集計は、どのような条件で出された数字なのでしょうか。

これらによって、まったく意味の違う数字であることを知っていただきたいと思います。

妊娠率=妊娠する確率

一般的に、20代の健康な男女が、避妊をしなかった時の、妊娠する確率、つまり「妊娠率」は、約2025%と言われています。

細かく言うと、授精卵ができる/できない、で言えば、実は80%程度は受精卵となるそうです。
しかし、その受精卵が着床する/しない、となると、数値は半減していきます。
そして、心音が確認でき、めでたく出生までの第一関門が通過できる状態まで進んだ状態となるものは、20%程度までに減ってしまいます。

※心音まで確認できた状態での妊娠率を「臨床妊娠率」と呼ぶようですが、心音確認できず早期流産することは意外と多いのです。
本人は自覚がないうちに起こる現象であるため、少しひどい生理痛と思ってしまい、まさか流産したと気づかないことも少なくありません。

ちなみに、妊娠判定薬が市販されるようになってから「化学流産」という言葉が使われるようになりましたが、これは、着床が実際には行われていない状態でも受精卵が作られると妊娠判定薬に陽性反応が出ることがあり、実際には着床後の流産ではありません。妊娠判定薬を早期に利用することで起こりうる現象ですので、説明書に記載されている時期に正しく使用することが必要です。

妊娠率が60%とは?

インターネットで病院のサイトを見ていると、妊娠率が60%とか、80%とか、、、すごい数字が記載されていることがあります。
妊娠率が高い病院=良い病院 というイメージが自然と出来上がりますが、先ほど、20代の健康な男女でも妊娠率は2025%であることを記しました。
では、この60%や80%といった数値は、何なのでしょう。

これは、「累積妊娠率」といって、1周期辺りの妊娠率ではなく、何周期か分の妊娠率をプラス(累積)している数値なのです。

例えば1周期の妊娠率を20%とした場合、100組の夫婦のうち1周期目で妊娠するのは20組です。
残りの80組のうち、次の2周期目に20%にあたる16組が妊娠します。
ここまで妊娠した夫婦の合計は201636組になることから、この時点で妊娠率は36%となります。
さらに、3周期目には残り64組中の20%である1213組が妊娠します。
合計は、48組で、48%となります。

このように数値をプラスしていった数値を「累積妊娠率」と言い、とても高い妊娠率となるのです。

妊娠率には年齢が関係する

20代では20~25%であった妊娠率ですが、年齢相応の妊娠率=妊孕力(にんようりょく)と言うものがあり、残念ながら年齢に伴って低下していきます。

  • 20代:約20~25%
  • 30代前半:約20~15%
  • 30代後半:約10%
  • 40歳:5%
  • 45歳:1%

逆に、年齢に伴って、流産率は上がります。

  • 20代:10%
  • 30代前半:10%
  • 35代後半:25%
  • 40歳:40%
  • 45歳:50%

通院する患者の年齢層が違えば、妊娠率の数値が大きく変わることになります。
20代〜30前半の女性が多く通う病院であれば、妊娠率は高くなり、40歳前後の女性が多く通う病院であれば、妊娠率は低くなります。

妊娠率の数値マジック

そもそも「妊娠」は、いつの段階をさす言葉なのでしょう。
尿検査で陽性反応が出た時点を「妊娠」とするのでしょうか。
それとも、胎児の心音が確認できた時点を「妊娠」とするのでしょうか。
どの時点を「妊娠」とするかで、妊娠率の数値は変わってきます。

妊娠率の数値をどのような環境で、どのような時点で算出しているのか、医療機関での出処はまちまちなので、サイトに掲載されている「妊娠率」の数値が何を意味しているのか、確認し、正しく理解した上で、比較していくことが必要です。
安易に数値だけを比べて、こちの施設が良い!、こちらはダメ!と、決め付けることは危ないかもしれません。

大きな病院だけでなく、不妊治療専門病院、クリニックもたくさんできているので、まずは候補をいくつかピックアップし、インターネットの情報を鵜呑みにせず、できれば直接行ってみたり、電話などで問合せをして、自分にあう病院を見つけることが大切だと思います。