不妊とは「避妊をせず夫婦生活を行っているにもかかわらず、1年経過しても妊娠に至れない状態」をさします。
不妊であると思われる場合、必要があれば治療を受ける、もしくは、積極的に妊娠できるようにすることを、不妊治療と言います。
なかなか病院には足が向きにくいのですが、女性には、子供を妊娠し、出産できるタイムリミットがあるので、女性の年齢が40代になっている場合には、1年という期間を待たずに、まずはご夫婦で検査を受けてみる必要があるのではないかと思います。

年齢別による妊娠率

不妊治療を進めていく中で、最も気になることは、”妊娠することができるのか?” ということだと思います。
年齢に伴って残念ながら妊娠率は低下していきます。現代医学がどんなに高度に発展していても、越えられない壁があります。

妊娠率の低下は、年齢に伴って起きる ”体の老化” と同じように起こる生殖能力の低下、女性ホルモンの分泌の低下、卵子の数の減少と質の低下、などによって起こります。
女性ホルモンの分泌は、20歳後半にピークを迎えた後は、徐々に減少していき、40歳からは急激な減少が起こります。
また、女性は母親のお腹の中にいる時から卵子の元となる細胞を持っています。出生の段階で卵子の元となる細胞は1/3に減ってしまい、年齢に伴って卵子は減少していくのです。つまり質の良い卵子が排卵できる可能性が下がっていくことで、妊娠率が下がることにつながります。

グラフは、厚生労働省による「母の年齢別にみた出生数の年次推移」を基にしたものです。
35歳を境に妊娠しにくい状態がおこり、逆に流産が増加していることが分かります。

年齢別妊娠率

不妊治療の選択肢

不妊治療には、次のような治療法があります。

  • 一般不妊治療
    タイミング法(タイミング療法)
    人工授精
  • 高度生殖医療
    体外受精
    顕微授精

タイミング法

タイミング法には、排卵誘発剤などを用いることで、妊娠率が上がると言われていますが、一般的に健康な男女の妊娠率は、20%程度と言われているので、5~6回を目安に行われます。

人工授精

人工授精も同様に排卵の誘発を行いながら、洗浄・濃縮された元気な精子のみを子宮内に注入します。
精子の数が少ない、奇形率が高いなどの問題があるカップルの場合には、功を奏するようですが、こちらも、基本的には5~6回を目安に勧められます。

体外受精・顕微授精

一般不妊治療で結果が出なかったカップルは、体外受精や顕微授精に進みます。
体外に取り出した卵子と精子を授精させていくものですが、体外受精は、培養液の中で自然に授精するのを待つものに対し、顕微授精は、顕微鏡下で卵子に精子を入れ込み、授精させるものです。
受精卵は数日培養した後、子宮内へ戻します(胚移植)。
受精卵が着床しやすいように、黄体ホルモンを注射するなどフォローされますが、実際に着床するかどうかは、”神のみぞ知る” という、人の手を加えることができない領域となっています。あるデータでは妊娠率は10%以下と言われています。

40代の不妊治療には、スピードアップが必要です!

タイミング法も人工授精も5~6回行っていると、単純計算で半年~1年が経過してしまうため、40代になっている場合には、2回程度に期間、回数を減らしてステップアップしていくか、または、タイミング法を抜かして、人工授精から始めていく場合も少なくありません。

しかし、自然妊娠にこだわる場合や、検査程度のつもりで病院に行ったような場合には、心の準備ができていないので、いきなり人工授精や、どんどんステップアップしていく治療に、不安を感じたり、治療が本当に必要なのかと疑心暗鬼になってみたり、さらには、儲け主義の悪徳病院であるかのような思いを抱くこともあるかもしれません。

とても難しい選択をしいられる局面がたくさんあるかもしれませんが、お一人で悩んだり、ご自身を追い詰めることがないように、必ずご夫婦で一緒に考え、ご夫婦にとってベストな選択肢を選んでいただきたいと思います。

そして、もし治療を受ける場合には、治療は医師に「おまかせ」するだけではなく、自ら積極的に参加していただきたいと思います。
そのためには、治療に対する思い込みや偏見などをなくすことが必要なので、まずは正しい知識を得ることが何よりも必要です。
治療にあたり、分からないことがあれば、その都度ごとに担当医師に必ず質問して、しっかり理解した上で治療をお受けになっていただきたいと思います。