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なぜ鍼やお灸で血行が良くなるのでしょうか?
一般的に、血行が悪くなると、肩こりやむくみ、冷え、生理不順といった、さまざまな体の不調が引き起こされます(写真1,2)。
これは、血流が低下すると、酸素や栄養が全身の細胞に行き届かず、老廃物が蓄積されてしまうからです。
従来、鍼やお灸には血行不良に対する高い効果が認められており、治療を受けると「全身の血行がよくなった」「身体が軽くなった」と実感される方は多くおられます。
それでは具体的に、どのようなしくみで血行が改善するのでしょうか。
鍼による血行改善
第一に、鍼を刺した点を中心に、肌がピンク色になることがあります。これを「フレアー反応」[1](写真3)と呼びます。
このしくみとしては、鍼が皮膚を侵害した(=皮膚を破った)ことで、感覚神経を経由し脊髄に情報が伝達、これにより末梢血管が拡張します。そして皮膚の血流量が増加し、皮膚が赤みを帯びるわけです(図1参照)。
第二に、鍼による血行改善には、このような局所的なものに加え、遠隔への血行改善効果もあります。
モルモットによる実験では、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の強い収縮に対し、腰部に鍼刺激を加えることで、ふくらはぎの血流量が増えて筋肉の状態が正常化されることが分かっています[2]。
これは自律神経の関与によるものと確認されています。
お灸による免疫力上昇
さらに、お灸については前述の効果に加え、透熱灸(お灸を燃やし切るタイプ)による血液成分への質的な効果も確認されています[3]。
これはお灸が、血液の中に含まれる白血球、具体的には好中球・マクロファージといった体内への異物を排除する役割をもつ白血球を増加させる働きのことです。
その結果、全身の免疫力は上がる方向に働きます(図2参照)。
まとめ
鍼灸による血行改善のしくみにより、臨床では婦人疾患、たとえば不妊症に対する子宮周囲の血流改善[4]や、逆子治療において効果が報告されています。
鍼灸治療は慢性的な血行不良にお悩みの方にとって副作用も限定的で、改善の可能性が期待できる治療法と言えます。
[1] 「局所疼痛に対する針作用の実験的研究Ⅳ:強縮によって減少した短縮高回復に対する血管拡張剤・神経ペプチドの作用」桑沢二郎ほか、昭和医学会誌、Vol 47, No1, P81-88, 1987年
[2] 「局所疼痛に対する針作用の実験的研究Ⅴ:視床下部全部を反射の中枢とする脊椎傍流筋施針の強縮後減少した腓腹筋短縮高の回復促進作用」桑沢二郎ほか、昭和医学会誌、Vol 45, No2, P279-285, 1985年
[3] 「マウス貪食能に及ぼす施灸刺激の影響第1報」古屋英治ほか、全日本鍼灸学会誌、Vol 31, No1, P34-41,1981年
[4] 「不妊症への鍼灸‐子宮周囲の血流改善と卵巣へのアプローチ」木津正義、医道の日本2018年7月号
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