髪の毛のトラブルの中でも、東京都港区北青山(外苑前/表参道)のアキュモード鍼灸治療院が治療対象としている “円形脱毛症” について、その原因や症状などについて解説していきます。

脱毛や薄毛の症状は老若男女を問わず、いつ何時誰に起きるかわかりません。
髪の毛は “女性の命” とか “女性の象徴” と言われているだけに、もし女性に髪の毛のトラブルが起きてしまったら、とても大きな問題です。
外出したくなくなったり、対人恐怖症のような症状に発展しうるお悩みかもしれません。
円形脱毛症になってしまったら、ぜひご参考になさってみてください。

日本人には、おおよそ10万本の髪の毛が生えていると言われています。
1cm×1cmの範囲に約150万本、1つの根元から2~3本、髪の毛が生えているのが正常な状態です。

髪の毛は、一度生えてきたら一生生え続けるのではなく、実は毎日50本~100本程度が抜けていきます。
髪の毛は生える→抜けるという一定のサイクルを繰り返しており、おおよそ5年くらいの期間で全ての髪の毛が生え変わると言われています。

ヘアサイクル

髪の毛が生える仕組み

皮膚は、表層から表皮層、真皮層があり、その下に結合組織があります。
表皮層は、新陳代謝によって垢として剥がれ落ちていく層です。
真皮層は、コラーゲンなどで表皮層をささえる層で、血管や神経が通っています。

髪の毛は、真皮層にある毛根部の根元にある毛球部の活発な細胞分裂によって、発毛、成長しています。
毛球部には ”毛母細胞” と ”毛乳頭細胞” と呼ばれる細胞があります。
”毛乳頭細胞” は、”毛母細胞” の中心部にあり、毛細血管からの栄養を ”毛母細胞” へ送り、”毛母細胞” からの発毛を促していきます。
脱毛しても、”毛母細胞” が細胞分裂する限り、髪の毛は生えていきます。

毛根部の解剖図

円形脱毛症とは?

円形脱毛症は、正式には単発性通常型(単発型)脱毛症と言います。
人口の0.1~0.2%に発生すると言われており、一生のうちに円形脱毛症になる確率は1.7%と報告されています。
男女差はなく全年齢層に発症しますが、20代~30代に多くみられる傾向があるようです。

俗に “10円ハゲ” などとも言われるように、主に円形に毛が抜けてしまう脱毛症ですが、複数個所が脱毛する(多発性通常型:多発型)ケースや、脱毛部分が連結して広範囲に脱毛するケースもあります。
ちなみに、円形脱毛症は、毛髪だけに起きるものではなく、体中の体毛にも起こりうる症状です。

円形脱毛症

脱毛は、徐々に毛が抜けていくというよりは、一気に円形状に抜け落ちてしまうので、自分では毛が抜けたことに気づかず、家族などから指摘されて気づくケースが多いようです。
円形脱毛症の症状が出るのは一生に一度だけのこともあれば、何度も再発するケースもあります。

兄弟姉妹、親子で発症することも珍しくないようで、円形脱毛症を発症しやすい遺伝的な体質があるとも言われており、アトピーの素因、甲状腺の病気や膠原病との関連性も言われています。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症の原因は、まだ明確には分かっていない部分もありますが、主な説に次のような4つの説があります。

①自己免疫疾患によるもの

円形脱毛症の原因として、一番有力視されている説です。
本来体を守るはずの免疫機能に何らかの異常がおこり、免疫の白血球(リンパ球)が毛根部を異物とみなして攻撃してしまうようになり、この攻撃によって髪の毛が一気に抜け落ちてしまうのです。
毛根部に対する “自己免疫疾患” とも言えるものです。

円形脱毛症の患者様には、橋本病などの甲状腺疾患(8%)、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、重症筋無力症、尋常性白斑症(4%)などの自己免疫疾患を持つ患者様が少なくありません。

免疫異常により毛根へ攻撃して脱毛がおきる

②アトピー素因、アレルギー性疾患

円形脱毛症の患者47 例中29 例(61%)が、アトピー性疾患(気管支喘息,アトピー性皮膚炎,軽度のアレルギー性鼻炎)のいずれかを合併し、 患者800 例中187 例(23%)がアトピー性皮膚炎を合併していたとの報告があります。
また、日本での調査では、患者200 例のうち,患者本人や家族にアトピー素因があるものが108 例(54%),患者本人にアトピー素因があるものが82 例(41%),アトピー性皮膚炎の合併は46 例(23%)にみられました。

このことから、アトピー素因やアレルギー性疾患が円形性脱毛症と関連性が高いことが示唆されています。

アトピー素因が円形脱毛症に関与

③遺伝性

最新の大規模疫学調査(中国)では、 患者の8.4%に家族内発症があり、患者との関係(親等)が近いほど発症率が高く、欧米の調査でも1親等内での発症は一般に比べて10 倍である。
また。一卵性双生児での発症率は55%と高確率である。
現時点では円形脱毛症は多因子遺伝性疾患と考えられている。
そのほか,ダウン症患者では 合併率が高いとの報告もある。

遺伝

③ストレス

ストレスは、以前は円形脱毛症の原因として一番有力視されていた原因です。
現在も、ストレスが直接的ではなく、間接的に作用しているのではないかと言われており、ストレスがあることで、円形脱毛症が起こりやすい環境になっているのではないかと考えられています。

ストレスがあると、交感神経が働くので血流が悪くなり、頭皮や毛根部への血行が悪くなるため髪の毛へ悪影響を及ぼす、ということだけでなく、ストレスが強く継続すると、円形脱毛症の原因として有力視されている自己免疫疾患や内分泌疾患をひきおこし、結果的に円形脱毛症を引き起こすのではないかと考えられます。

ストレスによる円形脱毛症

円形脱毛症の西洋医学的な治療法

症状の状態や病院での治療方針などによって、実際にどのような治療が行われるのか分かりませんが、一般的な治療法には、以下のような治療が行われるようです。

最初にステロイド薬の外用薬や塩化カルプロニウム液の外用薬、抗ヒスタミン薬の内服、セファランチンの内服、液体窒素療法が行われることが多いです。
治りにくい場合には、頭皮にステロイド薬を注射したり紫外線を照射したり、軽いかぶれを起こすような治療(局所免疫療法)へ治療を進めていきます。
また急速に進行する場合にはステロイド薬を短期間点滴するケースもあります。
脱毛の範囲が広く一定の期間で自然に発毛しない場合には、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を内服する治療も行うようになりました。

湿布や薬
  • ステロイド外用薬:副作用が少ないので最も一般的に行われる治療法法。
    脱毛が広範囲の場合はそのほかの治療法との併用が行われる。
  • ステロイド局所注射:脱毛部にステロイドの局所注射を打つ。効果は高いが、注射による痛みを伴う。
    4~6週間に1回の通院が必要になります。広範囲な脱毛には不向きとされている。
  • ステロイド全身投与:急激に進行する脱毛症に、ステロイドの全身投与(点滴)を行います。
    ステロイドの副作用として、糖尿病、高血圧、高脂血症、胃潰瘍、骨粗鬆症、緑内障などがでることがあるため、定期的に採血などを行って、副作用のチェックをする必要がある。
  • 紫外線療法(エキシマライト、エキシマレーザー):患部に高出力の紫外線を照射することで円形脱毛症の原因となる毛包周囲のリンパ球を制御する治療法。ただし、週1~2回の通院が必要となる。
  • JAK阻害薬(オルミエント®
    2022年6月に円形脱毛症に対しての適応が承認された新薬(細胞のJAKという部分を選択的に抑える内服薬です)です。
    ステロイドの全身投与ほどの副作用が無いので、長期に使用できるのが特徴とされています。

なぜ鍼灸が円形脱毛症に効くのか?

鍼灸治療がなぜ円形脱毛症に効くのか、その機序は分かっていません。
現在一番有力視されている原因が、毛根部への免疫の異常が起きている、ということで、西洋医学での治療法に局所免疫療法といって、人工的に炎症を起こし、異常に働いている免疫の対象を、人工的に起こした炎症に向けることで免疫の働きを正常化させていくという療法があります。
鍼灸は、鍼や灸で微細な炎症を起こすことで、同様な現象がおこり、円形脱毛症が直るのではないかと推測しています。
明確な機序につきましては、今後の研究に注目していきたいと思います。

円形脱毛症に対する施灸

日常生活での注意事項

よくある質問をまとめてみました。ご参考になさってください。

Q.円形脱毛症は治るのでしょうか?

A.個人差があることなので、一概には言うことはできませんが、当院で鍼灸治療をさせていただいた患者様は全員発毛し、元の状態に戻っています。毛根がなくならない限り、毛は生えます。根気よく治療を続けていくことが何よりも大切だと思います。
当院の場合、週1回の治療を4回(約1か月)の治療をまずは試してください。直る可能性のある方は、必ずこの4回の間に変化が見られます。

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Q.鍼灸を受けながら、市販の育毛剤を使用しても良いですか?

A.何が影響を及ぼしているのか分からなくなってしまうので、できれば育毛剤などはお使いにならないでいただければと思います。

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Q.病院でステロイド剤を処方されました。ステロイドは怖いと聞いていて、使いたくありません。

A.医師が管理の下で処方され、使用料を適切に使用していれば問題ないと思います。もし非薬物療法をと思われるのでしたら、ぜひ鍼灸治療をお試しください。

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Q.シャンプーなどはどのようなものを使用したらよいでしょうか?

A.できれば、頭皮に優しいオーガニック的なシャンプーなどをお使いになられた方がよろしいのではないかと思います。
脱毛する前、脱毛中は、ピリピリ感や痒みなど、通常は感じないような感覚があることもあるようです。
いずれにしても、頭皮は清潔に保つように心がけることが必要だと思います。

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Q.パーマや毛染めをしても良いのでしょうか?

A.パーマ液や毛染め液は、頭皮に負担をかけるので、避けていただいた方がよろしいのではないかと思います。

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Q.食事や日頃の生活で気を付けることはありますか?

A.バランスの取れた食事をとり、体を休ませ、ストレスをため込まないような生活をおくることが大切かもしれません。
適度な運動や趣味を行ってみたり、旅行に行ってみたり、気分転換を行ってストレス解消をされることも必要です。

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Q.脱毛以外に、体に変化がでることはありますか?

A.自己免疫疾患やアトピー素因、アレルギーが関連している場合があるので、関連疾患の症状が出ていることもあるかもしれません。
また、特異症状として、爪に変化がでることがあり、最も多いものは爪甲の小さな点状陥凹で,発症時や再燃時期に一致して横一列線状に並ぶことがあるようです。円形脱毛症と爪の変形を合併する確率は約20〜30%と言われています。