他覚的な耳鳴りは、筋性耳鳴り(筋肉の収縮に伴うもの)と血管性耳鳴り(頭の血管の狭いところを通る血流の雑音)がありますが、どちらも特徴的な耳鳴りの性状があり、側頭部に聴診器をあてることで聴取が可能なことから、診断は比較的に容易になされます。

耳鳴りの多くは、後者の自覚的な耳鳴り(真性耳鳴り)に分類されます。
これは多くの耳疾患及び全身疾患が原因となりうるため、まずは原因疾患の診断を行うことが大切です。

耳鳴りの原因となる難聴を伴う疾患には、次のような疾患があります。

耳鳴りは聴力が正常でも高度な難聴でもどちらでも起きる症状で、難聴そのものが耳鳴りの直接原因とは考えられない場合もあります。

更年期世代のめまい・耳鳴り

耳鳴りとめまいは、はっきりした原因は不明ですが、内耳が障害されると出現する症状なので耳鼻科でも対応されます。中枢性の原因も半数にあり、耳鼻科で解決がつかなければほかの科へ紹介されます。

いつ、どこで、何をしているときに、頭がどの位置のときにめまいが出現しますか?

回転性か、立ちくらみ程度か、浮遊感があるのかどうか。耳鳴りの音の種類や持続時間、日中気にならない程度か、難聴や吐き気をともなうか、などで原因が絞られます。

原因は様々ですが、症状発現直前の誘因は、精神的ストレスや睡眠不足がとても多いのです。

耳鼻科では、聴力検査や耳鳴りの程度検査、中枢性めまいを疑うときはMRI撮影をします。平衡機能検査には、歩行検査、足踏み検査など身体のバランスをみるもの、頭位を変化させて眼振(眼球の揺れ)をみるもの、また耳に水を入れて眼振の起こり方を観察するもの(カロリック検査)なども行います。

耳鳴り・めまいを起こす耳鼻科疾患としては、メニエール病、頭位めまい症、中耳炎、内耳炎などがあります。中枢性の病気としては、脳血管障害、脳腫瘍、小脳出血などです。

一番多いのは、いずれの検査をしても特に病気の異常がない「めまい症」で、自律神経的なもので、更年期障害の症状にひとつです。※≪めまい症の治療には≫参考

薬は、鎮暈剤(めまい症状を改善する薬)、ビタミンB12、循環改善剤、利尿剤などで様子をみます。耳鳴りに対しては、軽度の精神安定剤を使用することもあります。しかし、睡眠不足が直接の原因であることも多いので、睡眠薬をうまく使い、ぐっすり寝るのが一番いいでしょう。

温泉に行ったり、マッサージを受けたり、リラックス療法は、効果があります。多くの場合は、よく検査したうえで、脳や内耳に異常がなく、自律神経的なもので「治りますよ」と説明されることによって、安心して改善するというケースが多いです。また、ほかの更年期の症状がある場合は、更年期障害の治療をすることでよくなる場合も多いです。漢方薬もよく効きます。

耳鳴りの漢方薬

七物降下湯(しちもつこうかとう)

その名が示すように、7種類の生薬が配合された漢方薬です。血の持つ滋養作用が不足した「血虚」に対する基本的な処方である「四物湯(シモツトウ)」に「釣藤鈎(チョウトウコウ)」や「黄耆」「黄柏」を加えたものです。昭和の漢方医学の復権に尽力した大塚敬節が、自らの高血圧に伴う症状を治療するためにつくった漢方薬として知られています。

西洋薬の降圧薬と組み合わせて使用することが多く、高血圧にともなうのぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重(ずじゅう)感などの症状に用いられます。体は虚弱な人に向くとされます。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、息切れなどに適用されます。
本処方は体内の水分が停滞し、頭痛やめまいを引き起こす原因となる水毒という症状を改善するといわれています。
茯苓と白朮(蒼朮)は水分の循環を改善し、桂皮は冷えやのぼせ、動悸などの気の高ぶりを抑える作用が期待されます。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

“産婦人科の三大漢方薬”の一つで、血行障害やうっ血などを表す「血(けつ)」※の不足を補い、血液の巡りをよくして、体を温める「駆瘀血剤(くおけつざい)」です。
月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害などによく用いられるほか、産前産後の不調(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)などにも使われます。

対象となるのは、やせて体力のない「虚証(きょしょう)」の人です。めまい、立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴りなどの改善にも使われます。

※漢方薬を選ぶには、自分の体質と症状を正しく知ることが大切です。購入時には、医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。

耳鳴りの背後に「うつ病」があることも

うつ病になると、感覚が鋭敏になることがあります。耳鳴りを強く感じ、苦痛を感じやすくなります。うつがあり、特に精神的な苦痛を強く感じている人の場合、耳鳴りの治療と並行して、心療内科や精神神経科などで精神面の治療を行うことが勧められます。

苦痛な耳鳴りにずっと悩んでいる状態が続いている人は、耳鳴りに心の状態がどのくらい影響しているかを知ることが大事です。
苦痛な耳鳴りに悩んで耳鼻科を受診している患者さんの20~30%が何らかの心理的な問題を抱えていることが報告されています。
耳鳴りを感じている背景に、うつ状態や不安などのこころの不調はないか、また、うつ状態や不安が耳鳴りへの過剰なとらわれを生じていないか、病院で検査を受けてみることが大切です。

肩こりで耳鳴り!?

肩こり原因として多いのが肩周辺の筋肉の血行不良です。肩の血行不良は周囲の筋肉を緊張させます。
パソコンやスマホなど同一姿勢を取り続けることによる頚肩部の過緊張による耳鳴りもあるので、注意が必要です。

耳鳴りは首の後ろ側にある後頭下筋群と呼ばれる筋肉が凝り固まることによっても起きます。
後頭下筋群は頭の後頭骨や頸椎といった部位を結びつける筋肉であり、視覚や聴覚を司る筋肉として機能しています。
この筋肉がこってしまうことで、耳元で不快な音が鳴り響く耳鳴りが発症するのです。

超神経鞘腫が耳鳴りの原因であることも

緊急性の高い耳鳴りの原因は少なのですが、まれに聴神経鞘腫(原発性脳腫瘍の約11%を占める)などの頭蓋内病変の一症状として出現する場合があります。
その場合は他の症状(めまい、歩行障害、嚥下障害、顔面麻痺、しびれの有無など)についても十分に観察する必要があります。

耳鳴りで注意すべきこと

急性感音性難聴いわゆる、突発性難聴に伴う耳鳴りの場合は早期治療が必要になります。

急に生じた片側の感音難聴で、原因が不明の疾患が突発性難聴です。その多くに耳鳴りや耳閉感、約半数にめまいや嘔吐症状を伴うことがあります。のちにメニエール病や聴神経腫瘍などの別の診断がつく場合があります。

突発性難聴は早期であればステロイド剤が有効とされます。1週間以内にステロイド剤投与を開始すると、それ以降に開始した場合と比べ、治療成績がよいことが知られています。

ステロイド使用時の治療成績は完治が約3割、改善ありが約3割、不変または増悪が約3割となっていますので、発症後すぐに治療を受けることが大事です

(※ステロイド剤とは…ステロイドとは、副腎という腎臓の上端の臓器で作られるホルモンの1つです。体内の炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われています。)

湿布や薬

中医学的な耳鳴りについて

更年期世代のめまい、耳鳴りのところでも症状発現直前の誘因は、精神的ストレスや睡眠不足が多いとありましたが、中医学的にも「感情の鬱屈」による「肝鬱」が原因となることがあります。
肝気がうっ血することで瘀血が引き起こされ、あるいは大音量を聞いたり外傷を受けることによって、瘀血が生じるあるいは気圧の急激な変化や薬物の害毒など、いずれも耳部の経脈の流れを阻害するおそれがあります。

また、風邪によって耳閉感、耳鳴り、軽度の難聴、重症では突発性難聴といった症状が生じます。

耳に関連する局所のツボ

耳の周囲にあるツボも効果的なのですが、鍼灸治療では、手や足にあるツボを使って鍼治療をします。

耳鳴りでお困りの方は、セルフケアでこれらのツボをやさしく押圧したり、手足にお灸をしたりするのもよいかもしれませんね。